犬にも「親の愛」がある|母犬が子犬に示す本能と情のかたち | あらしん堂

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犬を理解するコラム

犬にも「親の愛」がある|母犬が子犬に示す本能と情のかたち

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目次

第1章|犬の親子愛は「本能」だけでは語れない

「動物の親子愛は本能だから」

この言葉を、私たちはあまりにも気軽に使ってきました。確かに、犬は人間のように言葉で愛を語ることはありません。哲学書を読むことも、将来を思い描くこともありません。

だからこそ、犬が子犬を守り、世話をし、寄り添う姿を見ても、それを「考えていない行動」「条件反射」「遺伝子に刻まれたプログラム」として処理してしまいがちです。

けれど――犬と暮らしたことのある人なら、ある瞬間、胸の奥に引っかかる感覚を覚えたことがあるはずです。

「今のは、ただの本能じゃない気がする」「この子、ちゃんと“思ってる”」「守ろうとしているのが、伝わってくる」その違和感こそが、この章の出発点です。

本能という言葉は、とても便利です。理由を考えなくても済む。感情を想像しなくても済む。人間と動物の間に、はっきりとした線を引ける。しかし同時に、本能という言葉は、行動の背景にある感情や判断を切り捨ててしまう危うさも持っています。

たとえば、人間の親が赤ん坊を守る行動も、生物学的には「種の保存」という本能に基づくものです。それでも私たちは、そこに「愛がある」と疑いません。

では、なぜ犬の場合だけ、「本能だから愛ではない」と切り分けてしまうのでしょうか。近年の研究によって、犬が豊かな感情をもつ存在であることは、もはや疑いようがありません。

脳科学の分野では、犬が安心したとき、信頼している相手と触れ合ったとき、人間と同じようにオキシトシン(愛着ホルモン)が分泌されることが分かっています。

また、飼い主の声や匂いを感じた際、犬の脳内では「報酬系」と呼ばれる領域が活性化します。
これは「うれしい」「安心する」「好きだ」という感情と強く結びついた反応です。

つまり犬は、何も考えずに動いている存在ではなく、感じることができない存在でもなく、感情を基盤に、行動を選択している動物なのです。

それでも「愛ではない」と言い切れるだろうか―

母犬が子犬を舐めるとき、子犬の鳴き声に反応して立ち上がるとき、危険を察知して身体を張るとき。それらすべてを見て、「そこに感情はない」と言い切れるでしょうか。

人間の愛と、犬の愛は、形が違うだけです。言葉がなく、説明がなく、理屈もありません。

けれど、守ろうとする、離れがたい、失うことを避けようとする、こうした要素がそろっているなら、
それを愛と呼ばずして、何と呼べばいいのでしょう。

このブログでは、犬の親子愛を「人間と同じ」と無理に言い換えることはしません。ただ一つ、提案したいのは――「本能だから」で思考を止めないこと。

母犬の行動を、「どうしてそうするのか」「そのとき、何が起きているのか」「子犬にとって、それは何を意味するのか」そうやって一歩踏み込んで見ていくと、犬の世界は、驚くほど繊細で、深く、温度のあるものに見えてきます。

人間の親子愛に比べて、「動物の愛」はしばしば“本能”の一言で片づけられがちです。しかし、犬と共に暮らす人なら、一度は思ったことがある「まるで愛しているみたいだ」

今回は、そんな犬の親子関係における“愛情表現”について、科学的な視点と、実際の行動から読み取れる感情の動きに迫っていきます。

第2章|犬はどのように愛情を表現するのか

― 言葉を持たない動物の、精緻なコミュニケーション ―

犬は言葉を話しません。「好き」「大丈夫」「ここにいて」そうした感情を、音声言語で説明することはできません。その代わりに犬が使うのは、体・距離・触れ方・視線・行動の選択です。

犬にとって、愛情表現とは「感情を伝える行動」そのもの。そしてそれは、人間に対しても、犬同士に対しても、基本的な構造はほとんど変わりません。

犬の愛情表現は「行動の組み合わせ」

犬の愛情表現は、単発ではなく、複数の行動が重なり合って成立します。

たとえば――

  • 視線を外さず、ゆっくりまばたきする
  • 相手のそばに自ら移動する
  • 身体の一部を触れさせたまま休む
  • 舐める、鼻で触れる
  • 相手の動きに同調する

これらはすべて、「敵意がない」「信頼している」「安心している」という感情がなければ成立しません。逆に言えば、愛情とは、犬にとって「安全だと感じている証拠」なのです。

人間に向けられる愛情表現の原型は「母子関係」

犬が人間に見せる愛情表現の多くは、実は母犬と子犬の関係の中で育まれた行動が土台になっています。

舐めるという行為

人の顔や口元を舐める行動は、単なる「癖」や「甘え」ではありません。これは、母犬が子犬を舐める行為と同じ文脈にあります。

  • 安否確認
  • 愛着の強化
  • 匂いの共有
  • 落ち着かせるための刺激

つまり舐めることは、「あなたは安心できる存在だ」という極めて原始的で確実なメッセージなのです。

お腹を見せるという行為

犬にとって腹部は、最も急所です。そこをさらすということは、「攻撃されないと信じている」という意思表示にほかなりません。子犬が母犬の前で無防備に眠るのと同じように、犬は本当に信頼している相手の前でしか、この姿勢を取りません。

そばにいるという選択

犬は、群れで生きる動物です。だからこそ、「どこにいるか」という選択には、非常に強い意味が込められています。

  • 何も求めず、ただ隣に座る
  • 触れない距離で、同じ空間にいる
  • 相手が動けば、自然についていく

これらはすべて、「あなたと同じ群れでいたい」という意思表示です。

犬同士の愛情表現は、より繊細

犬同士の場合、愛情表現はさらに微細になります。

  • 遊びの最中に、わざと力を抜く
  • 相手の嫌がることをしない
  • 相手が疲れれば、自然に距離を取る
  • 不安そうな犬のそばに静かに座る

これらは、相手の感情を読み取り、それに合わせて行動を変えている証拠です。もし犬が「考えていない存在」なら、このような調整行動は成立しません。

では、親子関係ではどうか

ここで、視点を「母犬と子犬」に戻しましょう。母犬は、

  • 子犬の鳴き声の違いを聞き分け
  • 体調や成長段階に応じて接し方を変え
  • 甘えさせる時期と、突き放す時期を使い分けます

これは、単なる反射行動では説明できません。子犬の状態を感じ取り、それに応じて行動を調整している。そこには明確に、感情と判断が存在します。

愛情とは「行動の選択」である

犬の愛情は、「かわいい」という感情の高まりではありません。

  • どこにいるか
  • どれだけ近づくか
  • いつ離れるか
  • どこまで許すか

こうした選択の積み重ねによって示されます。そしてそれは、母犬が子犬に向ける愛情にも、私たち人間に向けられる愛情にも、共通して流れている原理なのです。

母犬の子育て行動に込められた深い愛情

― 守り、育て、そして手放すまで ―

犬の母性は、感情的で劇的なものではありません。声高に主張することもなく、見返りを求めることもありません。けれどその行動を注意深く見ていくと、そこには一貫した「流れ」があることに気づきます。

迎え入れる → 守る → 教える → 手放す この流れこそが、母犬の愛情のかたちです。

出産直後 ― 命を迎え入れるという行為

子犬が生まれた瞬間、母犬は休む間もなく行動を開始します。

  • 羊膜を破る
  • 口と鼻を舐め、呼吸を促す
  • 体全体を舐めて刺激を与える

これは医学的に見れば、新生児の生存率を高めるための極めて合理的な行動です。しかし同時に、
母犬の脳内では強烈なホルモン反応が起きています

オキシトシン、プロラクチンといったホルモンが分泌され、母犬は子犬に対して強い愛着を形成します。つまりこの瞬間から、子犬は「存在そのものが守るべき対象」になるのです。

舐めるという行為が持つ、重層的な意味

母犬が子犬を舐め続ける理由は、ひとつではありません。

  • 血流を促し、体温を上げる
  • 排泄を促す
  • 匂いを記憶し、個体識別を行う
  • 安心感を与える

この中で特に重要なのが、安心感の付与です。子犬は生まれたばかりの世界を、「安全かどうか」でしか判断できません。母犬の舌の感触、体温、匂い。それらが繰り返し与えられることで、子犬の中に「ここは大丈夫だ」という感覚が刻まれていきます。

これは後の社会性の土台となる、極めて重要なプロセスです。

そばにいる ― 常に届く距離で守る

生後しばらくの間、母犬はほとんど巣を離れません。

  • 子犬に触れられる距離
  • 鳴き声に即座に反応できる位置
  • 外敵が来れば、すぐ立ち上がれる体勢

母犬は本能的に、「守れる配置」を取り続けます。ここで注目すべきなのは、母犬が過剰に干渉しないという点です。

子犬が眠っていれば、起こさない。自分で動こうとすれば、見守る。必要なときだけ介入する。
この距離感は、経験と感覚がなければ成立しません。

成長に合わせて変化する「接し方」

子犬が成長するにつれ、母犬の態度は少しずつ変わっていきます。

  • 授乳時間が短くなる
  • 甘えにすぐ応じなくなる
  • しつこい行動を軽く制止する

これは、愛情が薄れたからではありません。母犬は、「この子が自立する時期」を感じ取っているのです。いつまでも抱え込むことが子犬のためにならないことを本能と経験の両方で理解しています。

教えるという愛情

母犬は、子犬に直接「教える」わけではありません。言葉も説明もありません。それでも子犬は、こんなことを自然に身に着けていきます。

  • 咬む力の加減
  • 危険な距離
  • 群れのルール

これは、母犬が、「許す」「制止する」「無視する」といった行動を絶妙なタイミングで使い分けることで上手く伝えているからです。叱りすぎず、放置しすぎない。このバランス感覚こそ、母犬の愛情の成熟した形と言えるでしょう。

最後の仕事 ― 手放すという決断

子犬が十分に成長すると、母犬は次第に距離を取るようになります。これは、見方によっては「冷たく」見えるかもしれません。しかし実際には、これこそが最も高度な愛情表現です。

守り続けることではなく、生きていけると信じて送り出すこと。

母犬は、自分の役割が終わったことを理解し、静かに一歩引きます。

第4章|父犬には愛情がないのか

― 犬の家族意識と、見えにくいもう一つの役割 ―

犬の子育てを語るとき、どうしても注目が集まるのは母犬の存在です。出産し、授乳し、寄り添い、教える。目に見える子育ての中心が母犬である以上、父犬は「何もしていない存在」のように扱われがちです。しかし本当に、父犬には愛情がないのでしょうか。ただ関与しないだけで、無関心なのでしょうか。

答えは、「役割が違う」 という一言に集約されます。

犬の社会は「役割分担」で成り立っている

犬は、もともと群れで生きる動物です。群れの中では、みんなが同じ行動をするわけではありません。

  • 前に出て警戒する個体
  • 子どもを中心に守る個体
  • 周囲を観察し、状況を読む個体

人間の家族と同じように、犬の社会にも自然な役割分担があります。母犬が子育ての中心を担う一方で、父犬や他の成犬は、「直接世話をしない形での関与」 を行います。

父犬の愛情は「静かな関与」として現れる

父犬の行動は、派手ではありません。授乳もしなければ、常に寄り添うことも少ない。それでも観察していると、次のような行動が見られることがあります。

  • 子犬のそばに横たわり、動きを見守る
  • 他犬が近づけば、自然と間に入る
  • 子犬の遊び相手になり、力を加減する

これらはすべて、「危険がなければ介入しない」というスタンスに基づいています。父犬の愛情は、
出しゃばらないことによって成立している のです。

血縁にこだわらない父犬の不思議な行動

興味深い点として、父犬は必ずしも「自分の子」にだけ愛情を向けるわけではありません。

母犬が自分の子犬を明確に区別し、他の子犬には距離を取ることが多いのに対し、父犬は血縁関係のない子犬とも、比較的フラットに接します。

  • 遊び相手になる
  • 近くで眠る
  • 過度な攻撃を抑制する

これは、犬の社会が「個体」よりも「群れ」を重視する構造を持つことの表れです。父犬の役割は、
特定の子を守ることより、群れ全体の安定を保つことに近いと言えるでしょう。

「父性」が目立たない理由

人間社会では、抱っこする、話しかける、世話をするといった行為が「愛情」として認識されやすい傾向があります。

しかし犬の世界では、次のような行動も立派な愛情表現です。

  • 余計な刺激を与えない
  • 必要以上に関与しない
  • 危険なときだけ前に出る

父犬の愛情が目立たないのは、それが行動として最小限で、しかし確実だからです。

犬は「家族」という概念を持つのか

では、犬は人間のように「家族」という概念を理解しているのでしょうか。答えは、言葉としては理解しないが、関係性としては理解しているです。

犬は、「一緒に生きる相手」「安心できる相手」「自分が属する集団」を極めて明確に区別します。

母犬、父犬、兄弟犬。
それぞれに対する接し方が異なることは、犬自身が関係性を把握している証拠です。

家族意識は「行動の違い」に現れる

犬の家族意識は、言葉ではなく、行動の使い分けとして表れます。

  • 家族には無防備になる
  • 外部には警戒を示す
  • 仲間の不安に敏感に反応する

これは、「誰と生きているか」を犬自身が理解しているからこそ成立する行動です。

母性と父性は、形が違うだけ

母犬の愛情は、近くで、濃く、直接的です。父犬の愛情は、少し離れた場所から、静かに、間接的です。どちらが優れているわけでも、どちらが欠けているわけでもありません。それぞれが役割を果たすことで、犬の親子関係は、ひとつの「社会」として成立しています。

第5章|子犬にとって、親の愛は「社会性の土台」

― 安心して生きる力は、最初の関係から育つ ―

犬の行動問題を語るとき、私たちはつい「しつけ」「トレーニング」「飼い主の接し方」に目を向けがちです。もちろんそれらは重要です。しかし、その前段階として、すでに子犬の中に形成されているものがあります。

それが、「世界は安全かどうか」「他者は信頼できるかどうか」という、極めて根源的な感覚です。この感覚は、生まれて最初に結ぶ関係、すなわち親犬との関係によって形づくられます。

親の愛情が育てる「基本的安心感」

母犬にしっかりと世話をされて育った子犬は、次のような特徴を持ちやすいことが分かっています。

  • 落ち着いて眠れる
  • 環境の変化に過剰反応しにくい
  • 他犬や人に対して柔軟に接する
  • 不安からくる問題行動が出にくい

これらの背景にあるのが、基本的安心感です。

基本的安心感とは、「何かあっても大丈夫」「自分は守られてきた」という、言葉にならない感覚。子犬は、母犬の体温、匂い、反応の速さを通じて、この感覚を身体レベルで学びます。

咬み加減を学ぶという重要なプロセス

子犬同士のじゃれ合いや、母犬とのやりとりの中で、子犬は「咬む力の加減」を学びます。強く咬めば、相手が鳴く。やりすぎれば、母犬が軽く制止する。この一連のやりとりは、単なる遊びではありません。

  • 自分の行動が相手にどう影響するか
  • どこまでが許容範囲か

こうした社会的フィードバックを子犬は自然に受け取っています。この経験が不足すると、人間に対する甘噛みが強くなったり、衝動的な行動が出やすくなったりします。

早期分離がもたらす影響

事情により、母犬から早く引き離される子犬もいます。

繁殖環境、流通の都合、保護の現場。
理由はさまざまですが、早期分離は子犬にとって大きな負荷となります。

よく見られる影響としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 分離不安
  • 過剰な依存、または極端な警戒
  • 無駄吠え
  • 落ち着きのなさ

これは「性格が悪い」わけでも、「育て方が失敗した」わけでもありません。安心の学習が途中で止まってしまった結果であることが多いのです。

親の愛は「社会に出る準備」

母犬は、子犬を甘やかし続けません。成長に合わせて距離を取り、ときには拒否することで、
「自分で対処する力」を育てます。このプロセスを経た子犬は、こんな特性を身に着けます。

  • 不安な状況でも立ち直りやすい
  • 他者に過剰に依存しない
  • 適切な距離感を保てる

これは、社会に出るための準備そのものです。

親の代わりになる存在はいるのか

では、親の愛情を十分に受けられなかった犬は、もう取り戻せないのでしょうか。

答えは、いいえ です。犬は、成長してからでも、新たな安心の拠点を作ることができます。ただし、それには条件があります。

  • 一貫性のある接し方
  • 無理をさせないペース
  • 失敗しても見捨てない姿勢

これらを通じて、犬は少しずつ学び直していきます。

人間は「第二の安全基地」になれる

親犬が担っていた役割を人間が完全に再現することはできません。それでも、安全基地になることはできます。

  • そばにいても危険がない
  • 逃げ込める場所がある
  • 不安なときに助けてもらえる

こうした経験の積み重ねが、犬の心に新たな土台を作ります。それは、「親の愛の代わり」ではなく、
親犬から人へと受け継がれる愛情のバトンなのかもしれません。

第6章|人間にできること

― 愛情のバトンを、静かに受け取って ―

すべての犬が、理想的な親子関係の中で育つわけではありません。

繁殖の現場で早く母犬から離された犬。
保護施設を転々とした犬。
劣悪な環境で、人との関わりも犬同士の関わりも乏しかった犬。

そうした背景を持つ犬たちは、「愛情を知らない犬」なのではありません。愛情を学ぶ途中で止まってしまった犬なのです。

犬は「過去」ではなく「今」で生きている

人間は、過去を振り返り、後悔し、先を心配します。しかし犬は違います。犬が生きているのは、常に「今、ここ」です。だからこそ、どんな過去を持っていても、今の経験が積み重なれば、心は変わっていく

ただし、その変化には条件があります。

急がないことは、最大の優しさ

愛情を十分に受け取れなかった犬に対して、人はつい「早く慣れさせよう」「早く安心させよう」としてしまいます。けれど犬にとって、一番怖いのは「予測できないこと」です。

  • 今日は優しいのに、明日は叱られる
  • 触られるときと、放っておかれるときの差が激しい
  • 期待されていることが分からない

こうした状況は、犬の不安を強めてしまいます。

ゆっくりでいい。
反応が薄くてもいい。

変わらない態度こそが、最初の信頼になります。

触れることは「愛情」ではなく「対話」

人間は、触れることを愛情表現だと考えがちです。しかし犬にとって、触れられることは必ずしも快ではありません。特に、警戒心の強い犬、過去に嫌な経験をした犬にとって、触られることは「侵入」に感じられることもあります。

大切なのは、

  • 犬から近づいてきたときに受け入れる
  • 嫌がるサインを見逃さない
  • 無理に距離を詰めない

触れることは、信頼が育った結果として起こるもの。順序を間違えないことが重要です。

声は「意味」より「質」で伝わる

犬は、人間の言葉の意味を理解するわけではありません。しかし、声の高さ、抑揚、速さ、緊張感といった「質」は、驚くほど正確に読み取ります。

穏やかで一定のトーン。
短く、落ち着いた言葉。

それだけで、犬の呼吸がゆっくりになることもあります。言葉の内容より、感情の安定それが、犬とのコミュニケーションの基本です。

日常こそが、最大の治療

特別なことをする必要はありません。

  • 決まった時間に起きる
  • 決まった順序で散歩に行く
  • 毎日同じ場所で食事をする

こうした「当たり前の繰り返し」が、犬の心を支えます。母犬が子犬に与えていたのも、
実はこの「予測できる日常」でした。

失敗しても、関係は壊れない

犬と暮らしていれば、うまくいかない日もあります。

吠えた。
噛みそうになった。
思わず声を荒げてしまった。

それでも、関係は一度の失敗で壊れたりしません大切なのは、翌日も、同じようにそばにいること。犬は、「完璧な人」を求めていません。いなくならない存在を求めています。

愛情のバトンは、確かにつながる

親犬から受け取れなかった愛情を人間がそのまま補えるわけではありません。

けれど、

  • 安全な居場所
  • 一貫した関係
  • 見捨てられない経験

これらを通して、犬の中には新しい「安心の記憶」が刻まれていきます。それは、親から子へと渡されるはずだった愛情のバトンを、人間がそっと受け取る瞬間なのかもしれません。

第7章|犬の母性が教えてくれるもの

― 無条件の愛と、手放す勇気 ―

犬の母性は、雄弁ではありません。感動的な言葉も、涙を誘う演出もありません。けれど、その静かな行動の積み重ねは、私たち人間の心に、深く、確かに何かを残します。

それは、「愛とは何か」という問いへの、とても原始的で、揺るぎない答えです。

犬の母性は「見返り」を求めない

母犬は、子犬に感謝されることを望みません。自分がどれだけ尽くしたかを、振り返ることもありません。ただ、生まれた命を迎え入れ、守り、育て、そして、手放す

その役割を、黙々と果たします。そこにあるのは、「こうあるべきだから」という義務感ではなく、自然な流れとしての愛情です。

愛するとは、支配することではない

母犬は、子犬をコントロールしようとしません。

  • 思い通りに動かそうとしない
  • 自分のそばに縛りつけない
  • 失敗を先回りして防ぎすぎない

危険なときは守る。必要なときは介入する。それ以外の時間は、見守る。この距離感こそ、健全な愛情のかたちなのではないでしょうか。

手放すという、最も難しい愛情

子犬が成長し、自分で立ち、歩き、世界に向かっていけるようになると、母犬は静かに距離を取ります。それは、冷たさではありません。諦めでもありません。

「もう大丈夫だと、信じる」という選択。人間にとって、これほど難しい愛情表現はないかもしれません。

人間は、犬から学ぶことができる

私たちは、つい与えすぎてしまいます。心配しすぎてしまいます。失敗させないよう、先回りしてしまいます。けれど犬の母性は、こう問いかけているようにも見えます。

  • 本当に、それは相手のためだろうか
  • 信じることを、恐れていないだろうか

愛とは、常に手を伸ばすことではなく、引く勇気を持つことでもあるのだと。

愛犬との関係も、同じ流れの中にある

愛犬と暮らす私たちもまた、一つの「親子関係」を生きています。守り、教え、支え、やがては、その犬自身の選択を尊重していく。犬は人間よりも、ずっと短い時間しか生きられません。

だからこそ、その関係は、より濃く、より純粋です。

愛情は、必ずめぐる

あなたが愛犬に注いだ愛情は、その犬の行動や表情となって、周囲に伝わっていきます。穏やかな犬は、人を穏やかにします。信頼されて育った犬は、他者を信頼する存在になります。

その連鎖は、やがて別の命へとつながっていくでしょう。

犬の母性に心を打たれたとき

もし、犬の親子関係を見て、胸が締めつけられるような感覚を覚えたなら。それは、
私たちの中にも同じ「守りたい」という本能があり、同じ「信じたい」という願いがあるからかもしれません。

犬は、言葉で教えてくれません。ただ、生き方そのもので示してくれます。

無条件で守り、必要なときに離れ、信じて送り出す。―その姿に、私たち人間は、
何度でも立ち返ることができるのです。

第8章|愛を失った保護犬たちへ

保護犬や繁殖犬など、さまざまな事情で母犬の愛情を十分に受け取ることができなかった犬もいます。私たち人間にできることは、その子たちの「空いた心の器」を、丁寧に、ゆっくり、信頼とぬくもりで満たしていくことです。

愛犬に触れるとき、声をかけるとき、ふとした日常のなかで、あなたの“あたたかいまなざし”が、犬にとっての新たな愛情の原点になるかもしれません。

あなたがその子に注いだ愛情は、きっとどこかでめぐり、また誰かの命を支えていく。
犬の母性に心を打たれたとき、私たち人間もまた、優しくあれる存在でありたいと感じます。
今日、そばにいるあの子のぬくもりを、大切に。

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体にやさしい、添加物ゼロのおやつ。それは、母犬の舐める行為にも似た、「大丈夫だよ」「大好きだよ」という心のメッセージです。

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この記事の著者

三好 美佐子

野犬だった「あられ」、保護施設にいた「しんのすけ」との生活7年め。甲斐犬、ジャックラッセルテリアの養育難度の高さに必死にしつけや犬の栄養を学ぶうちに、動物の真の健康と幸せを深く探求するように・・・。金融機関での勤務歴35年、「社会貢献と幸せな消費が結びつく意義」に賛同する同僚たちに支援される形であらしん堂をはじめました!

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